ベトナム企業、インドでの存在感増大を 貿易拡大への課題

ベトナム―インド間の貿易総額は昨年、初めて130億ドルの大台を超えた。新型コロナウイルスの世界的感染拡大下の経済状況を考慮すれば十分な結果といえるが、専門家らは「まだ成長の余地は大きい」と満足していない。成長の足かせとなっているのは、インド市場におけるベトナム企業の存在感の薄さだという。

◇南アジアの主要市場、インド
ベトナムが製造を得意とする日用品など多くの製品群にとって、インドは南アジアにおける主要市場だ。今のインド市場が求めるのは化学製品、ゴム、コンピューターなどの電子製品とその部品類、スマートフォン、機械装置類、建築資材、衣類や繊維製品などで、ベトナムの輸出において重要な地位を占める工業製品が数多く含まれている。

在インド・ベトナム貿易事務所によると、両国間の貿易額が130億ドルを超えたのは2021年が初めてで、これによってインドは、中国や米国、日本、韓国、タイ、台湾、香港に続き、ベトナムの8番目の貿易相手国・地域となった。ベトナムとインドの貿易規模はさらに拡大すると専門家らは見ている。

ベトナム関税総局によると、2021年のベトナムとインドの間の貿易総額は前年度から36.5%増加して、132億ドルに達した。今年に入っても両国の貿易は好調を維持しており、1月の貿易額だけですでに13億8000万ドルを超えたという。

在インド・ベトナム大使館のファム・サイン・チャウ大使は、「ベトナム企業のインドにおける存在感の薄さが、二国間の貿易の妨げになっている」と分析する。近年、両国の間の貿易は急成長を見せてはいるものの、インドの国家規模を考えれば、同等の米国や中国との貿易と比べて控えめな数字にとどまっているという。

ベトナム企業の知名度の低さが、評判のいい地元パートナーや販路を獲得したり、商業上の紛争を解決したりする際に、ベトナム側にとって不利な材料となっているのだ。

◇市場拡大のカギは?

近年、インド政府はビジネス環境を改善するためのさまざまな政策を採用しており、海外企業のインドでの企業活動の拡大を奨励している。そのおかげでインドは、世界銀行の調査による「ビジネス展開が容易な国」のランキングで、2014年の142位から2020年には63位まで飛躍している。

アディティヤ・シャンカール法律事務所所長で、インド最高裁判所で弁護士として働くアディティヤ・シャンカール・プラサッド氏は、ベトナムとインドが伝統的によい関係を築き、二国間貿易も近年大きく成長したと評価し、「ベトナム企業がインド法人を設立し、事業拡大したいなら、今が最適だ」と勧める。

ベトナム企業がインドへ進出するなら、現地企業と共同でのジョイントベンチャー企業の設立のほか、有限責任企業の設立、支店、駐在員事務所、連絡事務所の開設など、さまざまな形態を選ぶことができる。合併買収(M&A)を通じて、インドに投資するということも可能だ。

どのような形態を採用するかは、それぞれの企業規模や展望などによる。特に、最新の法律や規制などを注意深く見極め、望むようなパートナー企業やサービス提供者がいるかを評価しつつ、「進出がうまくいかなかった際の撤退計画も含めて検討しておくべきだ」とアディティヤ氏は指摘している。