中小企業対象の所得税減税案を検討 ベトナム財務省 雇用創出や個人事業の法人化目指す

ベトナム財務省はこのほど、中小・零細企業を対象とした企業所得税の減税案を、国会決議案に盛り込んだ。中小企業の所得税率を現状の一律20%から、15~17%に引き下げる案で、中小企業の競争力を高め、雇用の創出や個人事業の法人化を促すねらいがある。

ベトナム政府は、2020年までに国内企業数を100万社にまで引き上げることを目標に掲げている。さらに、2025年には150万社、2030年には200万社を目指す。

現状を見ると、財務省のデータでは、ベトナムの企業数は60万社で、120万人の雇用を創出、国内総生産(GDP)の約4割を担っている。このうち、50万社が私企業で、さらにその96%が中小企業だという。

そのため、「中小企業はベトナムの社会経済の発展において重要な役割を担っており、ベトナムの経済発展の大きな推進力となる」というのが、財務省の認識で、今回の所得税減税案につながった。

隣国をみると、中国では、5%、10%、20%の企業所得税を、中小企業の収益額に応じて適用するシステムを導入。また、タイでは企業所得税は一律15%だが、中小企業に対しては、条件によって納税免除が適用されている。

一方ベトナムでは、中小企業に適用される企業所得税は、大企業と同じ税率20%だ。これが中小企業の発展にとって足かせとなっていることが以前より指摘されており、財務省が適切な中小企業向け税率の設定を急いでいた。

国会決議案で財務省は所得税率を、年収30億~500億ドンで正規従業員100人以下の中小企業に対しては17%に引き下げるとした。また、年収30億ドン以下で正規従業員数10人以下の零細事業所に対しては15%とする。税金逃れなどが生じないように、これらの優遇策は、大企業の子会社などには適用されない。

また、個人事業から法人化したばかりの企業に対しては、課税対象となる金額の収益が得られるようになってから2年間は、企業所得税を免除する。これによって、零細個人事業の法人化促進をねらう。

これらの新税制の適用で、年間税収は一時的に92億ドン減少する見込みだ。だが、財務省では、「国家予算にとって短期的にはマイナス要素となるが、新税制の適用によって中小企業が発展し、投資や生産の拡大が促がされるので、長期的には税収が増える」と訴えている。