2021年のベトナム経済、6~6.3%成長と予測 経済政策研究センター

ハノイ国家大学傘下の経済政策研究センター(VEPR)はこのほど、今年のベトナム経済の成長率を前年度比6~6.3%増になると予想した。公共事業の加速などが、経済の安定に寄与しているという。

◇経済改善の前兆
同センターのファム・テー・アイン准教授によると、ベトナム経済は今年第1四半期に、前年同期と比べて4.48%増となったという。これは、昨年同時期の3.68%増を上回る成長率だった。1~4月の消費者物価指数(CPI)は平均0.29%増で、第1四半期としては過去20年で最も低く抑えられ。一方で、同時期の農林水産業の売上高は3.16%増。製造・建設業の分野は6.3%増、サービス業は3.34%の成長を見せた。

これらの成果について、センターは、感染拡大早期に新型コロナウイルスの感染拡大を押さえ込んだ政府の抜本的な行動とともに、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)やEU・ベトナム投資保護協定(EVIPA)の調印が奏功したためと分析。さらには、主要公共事業の実施を加速し、投資金を迅速に支払ったことで、安定したマクロ経済環境が維持され、インフレが抑制された結果だとした。

アイン准教授は、今年はベトナム経済が前年度と比べ6~6.3%成長し、輸出の目覚ましい増加もしばらく維持されると予測した。

ベトナム投資開発銀行(BIDV)のカン・バン・リュック主席エコノミストは、バイデン政権による1.9兆ドル規模の財政刺激策も、ベトナムを含む新興市場に対して今後、プラスの波及効果をもたらすだろうと歓迎している。しかし、前年比成長率6.5~7%増という2021年度の経済成長目標を達成するには、政府や各省庁、地方自治体などのさらなる努力が必要だと指摘した。

◇インフレを警戒
不安定な世界経済は、ベトナムにさまざまな難題を突き付けている。今年、多くの国々で新型コロナが再燃。ロックダウンを余儀なくされたことによって、世界的なサプライチェーンの断絶が長引き、経済回復を弱める結果となっている。

今年になってから、原油価格が30%増と高騰し、鉄や鉄鋼などの金属価格も1年前と比べて約40%値上げされた。大胆な価格管理施策が導入されなければ、平均消費者物価指数は前年比0.4~0.6ポイント高くなる可能性がある。

経済政策研究センターは、世界経済における多くの不確実性とリスクを考慮すると、ベトナムは、パンデミック後の回復に備えるため、マクロ経済の安定とともにインフレ、金利、為替レートの現状維持が必要だと警告している。また、主要な市場だけに依存することを避けるために、輸出入市場をさらに多様化する必要があると話す。

最優先すべきは、社会保障の確保、マクロ経済の安定の維持、企業支援の強化だ。米国や中といった大国の今後の経済回復は、ベトナムの輸出企業に利益をもたらすと予想され、今年の経済成長の起爆剤となるこれらの企業の支援に重点を置く必要があります。

同センターは企業支援政策について、より実質的な措置で、焦点を絞って継続されるべきだ、と指摘。ベトナムがビジネス環境を改善するためには、行政改革の実施や、特に地方における国家管理の質の向上についても注力すべきだと提言した。