株式会社化からもうすぐ1年 ベトナム・マリタイム社、港湾サービス業務が好調

昨年9月1日に株式会社化し、新たな社名「ベトナム・マリタイム・コーポレーション(VIMC)」のもとで再出発した国営ベトナム海運総公社(ビナラインズ)。ベトナムの海運分野を先導する同社も、新型コロナウイルスの世界的感染拡大で海運事業が縮小を余儀なくされたが、港湾サービス事業が1兆ドンの利益を出し、品質と競争力が向上された一年となった。

2011年に破綻を経験し、再建の経過で不採算事業を切り離した同社は、現在は、19の子会社を保有、15の関連企業に資本出資している。同社が管理する埠頭は、総延長が1万3000メートルを超え、ベトナムの埠頭の全体の約25%に相当するなど、依然として海運大手に君臨する。貨物の処理能力は、国全体の処理能力の20%にあたる1億5000万トンにのぼり、ハイフォン、サイゴン、ダナン、クイニョンといった主要港で事業を展開している。

昨年の株式会社化は同社にとって、重要な転換点となった。「資本を増強し、目標を見据えて世界水準でサービスの品質と競争力を向上させるのに、大いに役立った」とVIMCのグエン・カイン・ティン社長は振り返る。

ティン社長によると、新しい事業モデル下での運営が始まってからの1年間、同社は新型コロナウイルスの世界的感染拡大によって、多くの困難に直面したという。昨年年初から、世界的な貿易や人の移動が劇的に縮小し、船便の貨物輸送量と、それに伴う輸送船の劇的な収入減少に直面することになった。

だが同社の2020年の事業成果は予想に反して、前向きな結果も多くみられた。具体例を挙げると、港湾の貨物取扱量は1億1000万トンを超え、税引き前利益は当初計画と比較して9.8%増の1兆4000億ドンになった。また、海事サービス分野の利益も1兆7000億ドンを超え、計画を12%上回ったのだ。

今年上半期には、海運貨物量も回復が見られ、1210万トンに達する予想で、港湾での貨物取扱量は6800万トンになると推定される。 連結売上高は5兆9000億ドンを超えると予想され、連結決算での税引き前利益は9511億4000万ドンになる見込みだ。

ティン社長は、船便による貨物輸送業務や海事サービス全般をPRできたことに加え、「市場で12億株以上が取り引きされる大企業になるために進めてきた手続きが完了し、これで国内外からの資本誘致が容易になった」と昨年から今年にかけての成果を語った。

◇港湾事業が回復支える
株式会社化後のVIMCは、港湾サービス業務が1兆ドンもの年間利益を出し、コロナの影響で打撃を受けた海運事業での収益の落ち込みを穴埋めした。これは同社の株式購入を検討する投資家にとっては魅力的にうつるはずだ。

ビンディン省にある傘下のクイニョン港株式会社を例にとると、国営ベトナム海運総公社が同社を買収した直後の2019年には、クイニョン港の貨物理扱い量は、前年度と比べ9%増の910万トンとなった。資本金が4040億ドンにすぎないのに、同社の2020年の収益は、1460億ドンとなり、前年比21%増だった。クイニョン港は前長820メートルもの埠頭をもち、1メートルあたりの最大貨物取扱能力は、当初の設計の5倍の約1万2500トンと、現時点でベトナムでももっとも効率的な貨物取扱い能力を備えた港の1つだ。

クイニョン港はまた2020年に、中央高原地方から韓国や日本、中国に向けての商品を輸送するために、北東アジア諸国への直接輸送ルートを開設。平均で1週間に1回、貨物船が出港しており、昨年は10億ドルを超えたビンディン省の輸出黒字に貢献した。

新型コロナによって影響を受けるベトナム経済だが、経済の専門家らは、国内外のコロナ収束後の回復期に入れば、ベトナムでの消費材生産分野が力強く回復すると見ており、VIMCの将来の海運や港湾事業、あらゆる物流サービスになどにおいて役立つと予測している。