飲酒運転撲滅キャンペーン、デジタルメディアで展開 酒類メーカーや自動車関連団体など

ベトナムを含むアジア太平洋地域では、毎日2000人もの命が交通事故によって失われており、その約3分の1は、アルコール飲酒が原因だという。最も事故リスクが高いのが10~30代の若い世代だが、彼らの将来を傷つけるこのような事故を無くそうと、酒類メーカーや自動車関連団体がソーシャルメディアを使い、飲酒運転撲滅キャンペーンに乗り出した。

ベトナムでは、男性が運転する交通事故の32%、女性が運転する交通事故の20%が、飲酒運転による事故だという。世界保健機関の調べでも、ベトナムの交通事故死の実に34%がアルコールがらみだという。国連の持続可能な開発目標(SDGs)も、2030年までに、世界的な交通事故の死者数を半減させることを目標として掲げている。

このような事故や飲酒運転を減らそうと立ち上がったのが、世界的なアルコール飲料やワインの製造企業でつくるワイン&スピリッツ連盟(APISWA)と、世界の自動車団体がつくる国際自動車連盟(FIA)傘下のベトナム自動車協会(AA Vietnam)、民間団体の「ベトナム責任ある飲酒協会(VARD)」、ベトナム・モータースポーツ協会(VMA)、在ベトナム欧州商工会議所(EuroCham)、ベトナムのヘルメットメーカーで、子どもの交通事故を減らすためのキャンペーンを展開するプロテック社だ。

プロジェクトにはほかに、国際的なデザイン事務所でホーチミンにも支社を持つオレス社が参加し、米国ASEANビジネス協議会(USABC)とEU-ASEANビジネス協議会(EUABC)が支援している。

共同で企画された啓発キャンペーンは、「断る勇気(Power of No)」と名付けられた。特にベトナムで飲酒が法的に認められる18歳から、30歳代までの若い世代をターゲットにするねらいから、デジタルメディアなどを積極的に活用して、飲酒運転を無くすためにドライバーたちに責任ある行動を促していく。

掲げられたキャッチフレーズ「No と言うことが力となる(Nói ”không” có thể mang lại cho bạn sức mạnh như thế)」から、運転するなら飲酒しない、ドライバーには酒を進めない、酒を提供しない―など、飲酒にまつわるさまざまな「NO」を再認識してもらう。今月から、ソーシャルメディア(SNS)に向けての発信が始まり、第1弾ではベトナムで人気のフェースブックに投稿された。PR動画や飲酒運転撲滅のためのコンテンツを、6週連続で発信。キャンペーンの次の段階では、これらの情報に触れた若者の行動変化などを測ることを目標としている。

「飲酒運転は、その国の社会的な成功を示すほかの指標と大きく関連している」と、国際自動車連盟アジア太平洋地域の統括責任者でもある、ベトナム自動車協会のグレッグ・クラフト会長は説明する。「若い世代は、アジアの道路をより安全にするための新たな文化的行動を形成していってくれる可能性を秘めている。彼らの意識変化を促すであろうこのキャンペーンにかかわることができて、誇りに思う」

「たくさんの悲劇的な結末を招いていることはみんな知っているのに、ベトナムでは今でも、飲酒後の運転はめずらしいことではない」と、国際自動車連盟(FIA)ベトナム支部長でもあるベトナム・モータースポーツ協会(VMA)のクアン・ギエムCEO(最高経営責任者)は嘆く。習慣として飲酒運転をする人、友人や同僚などの進める杯を断りきれない人、腕試しとして飲酒運転をする人などがいるというベトナムの飲酒運転の現状を、「ベトナムの悪しき文化だ。我々が消し去る責任をおうと思う」と強調する。

「我々はベトナムで自動車レースなどのモータースポーツの普及を図っているが、同時に、自動車や運転を愛する精神や、運転技術の向上などもベトナム社会に広がってほしいと願う。運転技術が高まれば、日常生活での運転で突然の事態に直面しても対応できるようになるはずです」とギエムCEは話している。