グリーンツーリズムへと舵を切るベトナムの観光 各地で取り組み増える

ベトナムの観光分野は近年、右肩上がりで、経済分野の成長をけん引する存在にまで成長した。その観光分野が、発展と並行して環境への配慮へと目を向けている。

政府が、自然にやさしく持続可能な観光の発展を、「2050年を視野に入れた2030年までの観光成長戦略」の目標に設定したことで、環境の課題に取り組む観光事例が各地で増えている。  

ベトナムが自然や環境に優しい観光の実現のためには、ごみや廃棄物の処理、文化遺産の効果的な管理、エネルギー消費の削減などの面で、まださまざまな課題克服が必要だ。世界の多くの国々で取り組まれている自然にやさしい観光「グリーンツーリズム」の考え方は、世界的増える傾向にあり、多くの企業や地域、観光客らに支持されるようになった。その影響はベトナムにも及び、観光を管理する企業や自治体などが、グリーンツーリズムを加速するためにさまざまな提案を始めている。

背景にあるのは、観光客らを受け入れる宿泊施設などが、需要の高まりとともに急増したことだ。特に、沿岸部のニャチャンやフーコック、ダナン、クイニョン、ハロン、サムソンなどでは、このため廃棄物などによる環境への影響や負荷、増加する電力消費、自然環境の破壊などの悪影響も発生した。また、砂浜の浸食や海水の流入による塩害など、世界的な気候変動が、ホイアンやカマウ、ムイネやフエなどの観光名所を悩ませている。しかし、ベトナムは多様な自然資源と文化をもち、このような多様性はグリーンツーリズムの発展に好都合で、大きな強みとなる。

ベトナム観光局科学教育委員会のグエン・バン・ディン委員長は、「自然にやさしい観光の発展は、経済成長と持続可能性のためだけではなく、ベトナムに大きな影響をもたらす気候変動に対応するためにも重要な取り組みだ」と話す。

世界的にみても、ベトナムの観光分野の成長は平均を大きく上回っており、専門家らは、グリーンツーリズムへの取り組みは避けては通れない課題であり、観光を今後も発展させ続けるためにも不可欠だと指摘する。自然資源や環境の保護に対して責任をもちながら、ベトナムの観光は発展を目指す必要があり、自然界や地形とそこに存在する動植物、そして、地域の社会と住民らへの利益を還元していかなければならない。

すでに、さまざまな試みが動き始めており、世界的にも評価されたグリーンツーリズムの実例も出てきた。例えば、ナショナル・ジオグラフィック誌は、ベトナム北部高原地帯のサパ市にあるトパス・エコロッジ・リゾート=写真㊤=を「世界のもっとも自然にやさしいリゾートベスト10」に選出。南部のリゾート地コンダオ島の観光施設「Six Senses」は、旅行雑誌「Trips to Discover」の選ぶ「世界でもっともエコで自然にやさしいリゾートベスト11」にランクインした。

観光研究開発局のグエン・アイン・トゥアン局長は、「観光関連の企業は多くが中小企業であるため、柔軟な対応ができ、自然や環境に優しい観光商品や施設、サービスなどを創造しやすいのではないか」と、この分野の成長に大きく期待している。