ガイドブックをより楽しく 「ハノイ ダイジェスト」発行

ハノイの見どころや文化を、ユーモラスなイラストとともに紹介するガイドブック「ハノイ ダイジェスト」=写真=がこのほど発行された。製作したル・キエン・チュンさん(30)は、「多くの人に楽しみながら読んでもらえるガイドを作りたかった」と話している。

「ハノイ ダイジェスト」は、コロナ禍をまたいで、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた労作で、内容も盛りだくさん。175歳の伝説のカメの逸話からベトナム民主共和国の初代主席、ホー・チ・ミンがなぜ偉大な人物になったのか、ハノイの人が外国人観光客に対して感じる好きなところと嫌いなところ、など地域の文化、情報が満載されている。

「ロンリープラネットやハノイ・バジェット・トラベルガイドなど、ハノイのガイドブックやサイトはたくさんある。ただ、それらの多くは、エンターテインメント的要素は少ない。単に便利なだけではなく、楽しんで読んでもらえるようなガイドを作りたかった」。「ハノイ ダイジェスト」を作った動機について、チュンさんはこう説明する。

チュンさんは2011年、ハノイで大学生活をスタート。以来、ハノイについて紹介している英語情報を調べるようになった。そうしたなか、留学や駐在勤務の地元の外国人によるフェイスブックのグループ「ハノイ・マッシブ(Hanoi Massive)」を知り、参加。旅や仕事、留学のためにハノイに来る人たちを支援するようになった。

「『ハノイ・マッシブ』は、ハノイの暮らしがわかるだけではなく、遠く離れた英語圏の文化まで知ることができる。しかも、グループメンバーの多くがユーモアにあふれ、役立つコメントも多い」とチュンさん。これが、ガイドブック誕生のベースとなった。

ただ、「ハノイ・マッシブ」には、不便な点が一つあった。新参者が情報をさがそうとすると、何千というスレッドをスクロールしなければならなかった。時間と手間を省けるよう、よりアクセスを簡単にできないか。それが「ハノイ ダイジェスト」を作る出発点になった。2016年の10月のことだった。

2018年には、だいたいの形が仕上がり、「ハノイ・マッシブ」に投稿。メンバーから多くのアドバイスや建設的な意見が寄せられた。最も力になってくれたのは、インターンシップでハノイにやってきたイタリア系の友人、ブルーナ・ダラセンさん。ブルーナさんは、写真やイラストを加えて本のように章分けすることなど、貴重なアドバイスをしてくれた。そして、チュンさんはそのアドバイスに従うことにした。

写真の代わりに自身で描いたイラストを使おうと思ったのは、他のガイドブックにない特徴を打ち出したかったから。シンプルでユーモラスな線画は童話「ウィンピー・キッドの日記(The Diary of a Wimpy Kid)」などから影響を受けた。

出版には知人の英国人2人に協力してもらった。1人は妻と数年間一緒に暮らしていた英語教師で、もう一人は20年間ハノイに住んでいる観光分野の仕事で働く女性。2人は無償で快く英文の編集を手伝ってくれた。

初版の500部は2020年の旧正月(テト)の直後に出版。しかし、新型コロナの感染が拡大したため、さらに3年をかけて内容を改善。昨年末には第2版として2000部を発行したところ、旅行者だけでなく、地方からハノイに出てくる若者らやその保護者など、幅広い層から好評を得ている。

今後は、ハノイ以外の観光都市に関するガイドブックも作成する予定というチュンさん。「これから毎日少しずつ作り続ければ、きっとできるはずです」と話している。