新教育制度導入へ研修など対応急ぐ ホーチミン市教育訓練局

ベトナムでは、2020~2021の学校年度、全国規模で、新しい教育制度が導入される。教科書やカリキュラムが刷新されるのに伴い、新たな教材の選定、教諭らの訓練実施や施設改修などが必要になる。ベトナム南部ホーチミン市では、同市教育訓練局と市内の小中学校が準備に追われている。

このほどホーチミン市内で開かれた会合で、グエン・バン・ヒュー同市人民委員会副委員長が、新制度導入を背景とした教育訓練コースの開設と、実施の具体的な計画を発表した。

それによると、研修はホーチミン市教育訓練局、ホーチミン教育大学と通信大手、ベトテルが提携して企画。新一年生の担当教諭と学校管理職を対象に研修を開始し、その後、他の学年の教諭にも対象を広げる。第一弾として、新一年生の担当教諭約5000人に加え、547人の学校長、827人の副校長らが受講しており、7月中に終了する予定。2年生の教諭らは、今月から来年6月にかけて、3、4、5年生の研修はそれ以降に、順次研修を受ける。

ヒュー副委員長は、新制度導入をスムーズにするために「先に研修を受けた先生たちが、各校に戻り、研修内容を同僚に伝えてくれると期待している」と話した。

◇教員確保に工夫を
改革は教育内容だけではなく、教師の待遇にも及ぶ。私立、公立の全学校で「教員が働きやすい環境を整備する」よう指導されており、運営スタッフや管理職らはこの面に関する研修を受ける。

今回の教育改革の大きな目玉が、独自の教育計画策定など、学校の独自性や一定の自由裁量が認められるようになる点だ。中央一局集中的な判断ではなく、教育省の定める目標に沿いながら、各学校や地域ごとに専門家チームを設け、教育カリキュラムを設定するようになるという。

教育面には、課題も多い。その一つが教員の不足と偏りだ。ホーチミン市では、美術や音楽などの芸術部門の教諭と、英語を中心とした外国語の教諭の不足が著しい。対策として、同市教育局は、教育学部以外の学部や大学との連携を模索。外国語などを専攻する学生らが、あとで教育関連の実習を追加受講することで、教員になれるシステムの導入を提案している。

◇南部の実情に沿う新教科 
今回、教科書も刷新され、5種類の新しい教科書が認定を得た。同市教育訓練局のグエン・タイン・チュン事務局長は、すでに各学校が使用する教科書をこの中から選定し、新型コロナウイルスによる外出自粛で学校が休校だった期間中に指導の具体的な方法などを検討していたという。

5種類のうち、チャンチョイ・サンタオ社の教科書の採択が最も多く、市内の8割以上の学校で使われる。この教科書は、周辺のベンチェ省、バリアブンタウ省、アンザン省などの11校でも採用された。

この教科書は、執筆者の多くが南部出身で、南部の方言を使用しているほか、地元や生徒たちになじみ深い事例などを紹介している。同市タンフー区のファンチューチン小学校校長は、「写真が生き生きとしており、子どもの興味を引く」と話した。

新教科書の価格は、5冊セットで30万ドン(12.9ドル)と、以前の約2倍に跳ね上がっている。政府は新しい教科書の購入補助を行わないため、ホーチミン市では独自の支援制度を行う予定で、経済的理由で購入できない生徒の教科書を、学校が代替購入できるようにするという。

残る課題が、生徒数に対する教室の不足だ。教室を建て増し用に市が確保できた土地は、十分ではない。新制度では1年生も、朝から午後まで授業を行う想定で、午前中は主に国語、算数など教科学習にあて、午後はその他の活動を盛り込む予定だ。

ホーチミン市には小学校が551校あり、このうち公立校は484校で、今年4校が新設された。2020年度の教室数は1年生向けが3550室となるが、計算上では443室が足りないことになる。このため、学校では教室以外の空き室や講堂、校庭なども活用し、教室不足を補う予定だという。