誰もが享受できる保健医療の実現へ ベトナム保険省、WHOと協力強化

ベトナム保健省は、すべての人が適切な保健医療を、適正な費用で受けられる状態を目指す「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を実現し、ベトナム全土へと拡大するために、世界保健機関(WHO)との医療分野での協力を強化している。

協力は新型コロナウイルスの世界的まん延以前から、数年間にわたって続けられているもので、WHOはベトナムの健康保険システムの拡大と効率化を支援してきた。協力プログラムの実施によって、ベトナムは首相政令122/QD-TTg 号にそった「2011~2020年にかけての公衆衛生戦略」や「2030年に向けての公衆衛生ビジョン」などを効果的に実施することができた。

協力プログラムでは、WHOがさまざまな技術支援をベトナムに提供してきたほか、政策対話を実施や、部門を超えた協力や AIDS、結核、マラリアなどの感染症の診断や治療、予防接種などの実施と評価を実現してきた。

同時に、ガンや心臓循環器の病気、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、気管支肺炎などの非感染症疾患の予防と制御に向けた国家戦略の実施なども支援。パンデミック対応のほか、法律的対応や感染症の監視などの面でも効率化を進めてきた。

WHOとベトナム保険省は2016~2017年の会計年度に一定の成果を上げ、その後2019年まで総額約2100万ドル(約4890億ドン)を投じて、ベトナムの保健医療や公衆衛生の向上につとめてきた。

◇だれもが享受できる医療の実現へ
保険省とWHOは、ベトナムの医療制度を拡充し、品質を向上するとともに、貧困層や病気などに最も影響を受けやすい弱者を含め、あらゆる人が享受できるシステム確立を目指している。そして、感染症やそれ以外の疾患、公衆衛生上の脅威を制御し、さまざまな医療の幅や対象者を広げつつ、薬やワクチン、サプリメント類の管理を徹底し、人々が必要不可欠な医療を受け、薬を手に入れることができる社会の実現を目指している。

2019年までの取り組みは、一定程度の成果を得ることができた。だが、2014年にはベトナムの人口の1割が60歳を超えるなど高齢化は加速していることに加え、感染症以外の疾病による死者数が全体の73%を超えたことなども含め、ベトナムはまだ、公衆衛生上のさまざまな課題に直面している。病気致死率が、地方や農村部では都市部の約2倍、少数民族の間では約3倍高い数字となっている医療格差の現状や、気候変動の悪影響、非衛生的な飲料水や食料、栄養失調さらには食品の安全性なども、解決が急がれる課題だ。

次のフェーズでは、保険省の機能強化に焦点を当て、医療の能力を拡大し、持続可能なかたちで、公衆衛生の安全性を確立していくことを目標としている。WHOはベトナムの努力を支援し、ベトナム政府が最優先する、「国民すべてに向けた健康管理」の最終目標を実現する手助けを行っていくという。