自然災害の被害を最小限に 効果的な防災計画整備が急務

ベトナムは、世界でももっとも地球の気候変動によって悪影響を受ける可能性のある国のひとつだという。そのため、人命の損失を防ぎ、経済への影響を削減するなど、被害を最小限に抑えるための防災計画の整備が緊急の課題となっている。

◇予想外を超える災害規模
国連防災機関(UNDRR)によると、過去20年に世界における自然災害の種類は75%も増え、各地で100万人以上の死者を出し、40億人の生活に影響を及ぼしているという。また、経済的な損失は3兆ドルに近い。なかでもベトナムは、同機関などの報告で「気候変動の影響を最も受ける」とされた5カ国に名を連ねており、極端な異常気象が発生する頻度が他国と比べても多いのが現状だ。

過去20年に、ベトナムで、台風や洪水、地滑りなどの自然災害によって命を落とした人の数は1万3000人にのぼり、家屋や建物への損失は金額にして64億ドルに達する。昨年もベトナムは自然災害に見舞われたが、その頻度が多くなったばかりでなく、異常な規模となったうえ、予想不可能な要因を多くはらんでおり、それらが被害を拡大させる要因となった。

2020年にベトナムを襲った台風と洪水は、いずれも過去の災害やこれまでの予想をはるかに超える記録的な被害をもたらした。6つの台風が相次いで上陸したために、人々は災害から復興したり、次の被害に備えたりする猶予すらなかった。強大な台風の規模は異常気象と相まって、中部地方に何週間続けても大雨を降らせたが、特にゲアン省からクアンガイ省にかけての中風沿岸部の7省で、その被害を拡大させた。6本の河川で水位が過去最高を記録して洪水を引き起こしたのに加え、山間部では滝のような大雨が、深刻な地滑りや土砂崩れをもたらした。

農業農村開発省傘下の災害予防制御総局によると、2020年1年間の、自然災害による死者数は288人、行方不明者65人、けが人は876人だった。家屋の倒壊は3424軒、建物の浸水被害は50万9793軒。さらに、19万6887ヘクタールの田畑が壊滅的な被害を受け、411万羽のニワトリが死んだ。堤防、運河や河川の川べり、海岸線や道路などが洪水によって浸食され、経済的被害は36兆ドンにのぼった。総合的にみても、昨年の台風と洪水は、これらの数字だけでは計り知れない長期的な影響を中部地方にもたらす結果となった。

◇積極的で的確な防災対策を

これらのことから、ベトナムが積極的に自然災害に対応しない限り、今後も甚大な損失を被る事態は避けられない。自然災害の被害を最小限に抑えるための防災策は、今すぐ取り組み、長期的に継続すべき重要課題となっている。

今後5年間で、ベトナム政府は2015~2020と同規模の自然被害が発生した場合でも、人的被害を30%削減できるような災害対策を施すことを目標に掲げている。これらは、災害現地での迅速な災害指揮▽現場への人材派遣▽現場での設備設営▽現地物流の実現―の「4つの『現場』対策」と呼ばれる措置の実施と、積極的な予防策、迅速な対応と効果的な回復策の導入などで実現を目指す。

そのために、2021~2030年の自然災害防災計画と制御戦略を策定。国家レベルから地方や行政区単位にいたるまで、それぞれの気候変動への対応や防災戦略を念入りに検討する。

さらに、日本やアメリカなどの例に学び、鉄砲水や土砂災害の危険性など災害時の危険地域や予想などを示したハザードマップを作っていく。周囲の住民らへの防災意識の啓もうを進めると同時に、土砂崩れや鉄砲水などが発生する前に避難誘導を始められるよう、早期警告システムを構築するという。